栄養代謝関連疾患は、過栄養による肥満症から低栄養によるサルコペニアやフレイルまで幅広く診療を行っています。臨床内科学講座として国内唯一の栄養学教室として、当科教授が中央診療施設の「疾患栄養治療部」の部長を兼任し、全教員が「疾患栄養治療部」の教員を兼務しています。管理栄養士と連携して外来での栄養相談、病棟での栄養管理、Nutrition Support Team（NST）活動を積極的に行っています。肥満症に対しては、食事・運動を含め生活習慣改善に向けて教育・支援に加え、肥満症治療薬の導入や消化器外科をはじめとする院内他科・他部門と連携して減量代謝改善手術など先進的な医療も提供しています。またサルコペニアやフレイルなど多疾患併存を背景とする病態では、高い個別性への対応も必要となりますが、国内屈指の栄養指導実績を有する疾患栄養治療部とともに適切な栄養治療を提供し、他の診療科での治療成績向上にも尽力しています。

糖尿病、内分泌疾患、栄養代謝関連疾患の新規医薬品・医療機器の開発にも積極的に取りくみ、革新的医療の創出に注力します。当科が発信してきた科学的知見は、インクレチンの糖尿病治療への臨床応用はもちろん、今後、肥満症治療への臨床応用にも貢献することが期待されます。また、糖尿病や内分泌疾患に対する細胞治療や遺伝子治療に向け、膵β細胞や副腎皮質細胞をはじめとする内分泌細胞をiPS細胞等から効率よく作成し、移植する技術や移植細胞の生着を確認する可視化する技術の確立に向け研究を推進します。さらに糖尿病におけるインスリン分泌障害の複雑な遺伝素因解明に向け単一遺伝子異常により生じる糖尿病の研究や希少な内分泌疾患の成因に関する研究を加速させます。従来から注力しているトランスレーショナル研究を推進するだけでなく、レジストリ研究、新規検査法の開発も交えて、内分泌疾患の臨床にパラダイムシフトをもたらす成果を目指します。さらに超高齢社会を迎え、栄養療法の重要性が強く認識されるなか、医療の重要な柱のひとつとしてプレシジョンかつプロアクティブなニュートリションケアを、領域横断的な研究によって実現していきます。

研究と診療の推進には、多様な課題を共に克服できる力強いチームの構築が欠かせません。学部教育および卒後教育を通して、研修医や学部学生のみなさんに、糖尿病、内分泌疾患、栄養代謝関連疾患に関する研究と診療の魅力を伝え、ひとりでも多くが仲間に加わってもらいたく思います。当科では、カンファレンスやジャーナルクラブを通して、皆が自由に考えを述べ、積極的に意見交換できる雰囲気づくりに注力しています。また、国際的な視野を持ち、科学的思考を養ってもらうため、国際会議への参加や論文発表を全面的に支援しています。さらに、国内外のエキスパートを招いて定期的に研究会やセミナーを開催し、教育関連施設とも緊密に連携をとっています。女性医師をはじめ多様な人材が、やりがいを感じながら、臨床、研究で活躍できる環境整備につとめています。