肝臓の代謝調節機構に関する研究|糖尿病 食事療法 治療 京大病院 栄養内科





研究概要

肝臓は糖代謝、脂質代謝、たんぱく代謝を司る最大の臓器でありその生体代謝全体に占める役割の重要性は以前より揺るぎないものです。 糖代謝のなかでも肝糖新生の亢進は2型糖尿病の特徴の一つで、これを是正することは、2型糖尿病の治療として重要です。
肥満を伴う2型糖尿病患者に多い欧米では第一選択薬となっているビグアナイド薬は、中世ヨーロッパで糖尿病治療に用いられた植物(Galegaofficinalis) に含まれるグアニジンに始まる経口糖尿病薬です。近年、ビグアナイド薬の一種であるメトホルミンの大規模臨床介入試験の結果より、 体重増加をきたさず血糖コントロールを改善する固有の効果が判明しました。したがって、現在では、糖尿病治療におけるこの薬の臨床的意義がますます重要となっています。 しかし、メトホルミンの血糖降下作用は、AMPキナーゼ活性化を介した前述の肝糖新生の抑制によることまでは生体内で証明されていましたが、詳細は不明でした。

なぜメトホルミンがAMPキナーゼを活性化するのかについては、当教室では「メトホルミンが、活性酸素(O2-)と一酸化窒素(NO)より形成される活性窒素(peroxynitrite)を増加させ、 次にLKB-1を活性化し、その下流にあるAMPキナーゼを活性化する」一連の反応の詳細を世界に先駆けて発表しました。 現在は、今回新たになった肝糖新生の抑制にかかわる細胞内情報伝達経路を利用した抗糖尿病治療薬の創薬にも研究の幅を広げています。

肝臓の代謝調節機構に関する研究