食事量の制限によって、酵母からげっ歯類にわたる幅広い生物種において寿命が延長することが知られていましたが、その機序は長い期間わかっていませんでした。
最近になり酵母においてSir2遺伝子がこの現象に重要な役割を果たしていることが報告されて以降、
Sir2関連遺伝子は哺乳類においても寿命や老化に影響を与える可能性のある遺伝子として世界で注目され、多くの研究結果が発表されてきました。
哺乳類において、酵母Sir2の類似遺伝子はSirtと呼ばれ、Sirt1からSirt7までの7種類が存在します。
私たちの教室では、この7種類のSirtのうち、遺伝子由来産物がミトコンドリアに局在するSirt3、Sirt4、Sirt5について研究しています。
ミトコンドリアはエネルギー産生の場であり、生命活動に深くかかわる細胞内小器官です。私たちは、このSirt3、Sirt4、Sirt5がミトコンドリアにおいてエネルギー産生に関わる代謝調節に深くかかわると考え、
研究を進めています。これまでに、これらの3つの遺伝子からできたたんぱく質はミトコンドリア内で異なった場所に存在し、それぞれ異なる代謝調節をしている可能性があることなどを明らかにしてきました。
Sirtの代謝調節機能の解明を通して、寿命や老化のメカニズムを明らかにするよう日々努力しています。
また、私たちは生命を保つための基本となる糖代謝において新たな制御メカニズムの存在を検討する目的で、野生型マウスおよび糖尿病モデルマウスの膵島を用い、リン脂質組成変化の解析を行っています。
その結果、野生型マウスと肥満・糖尿病モデルマウスではリン脂質組成が異なることが明らかとなり、さらなる研究により、リン脂質組成と肥満や糖尿病との関連が明らかになることが期待されます。