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膵β細胞イメージング研究

膵β細胞が破壊される1型糖尿病だけでなく、2型糖尿病においても発症時にすでに膵β細胞量が減少していることが知られ、 また発症後の膵β細胞量減少の進行は治療抵抗性や重症化の一因と考えられていますが、これまで生体の膵β細胞量を直接評価することは不可能でした。そこで、生体内の膵β細胞量を非侵襲的に評価できる膵β細胞イメージング法の開発が求められています。

また、膵β細胞腫瘍であるインスリノーマは腫瘍からのインスリン過剰産生により致死的な低血糖を来しうる疾患であり、手術による根治には術前の精密な局在診断が極めて重要です。一方、腫瘍の機能性評価は従来の画像診断法では困難な上、超音波内視鏡下生検や選択的動脈内Ca刺激試験は侵襲的で術者の熟練を要するという課題があります。このため、非侵襲的なツールとしてインスリノーマに特異的な分子イメージング法が求められています。

私たちは、Glucagon-like peptide-1 (GLP-1)受容体に着目し、本学薬学研究科(病態機能分析学分野)、放射線診断科等との共同研究で、核医学画像診断法であるSPECT・PET用のGLP-1受容体標的プローブを開発しました。私たちは、この新規プローブを用いた非侵襲的膵β細胞定量法・インスリノーマ診断法の実用化を目指しており、動物実験、健常者を対象とした第1相臨床試験を経て、現在は1型糖尿病やインスリノーマの症例を対象とした臨床試験が進行中です。

本研究の成果は、糖尿病の超早期診断・介入を通して発症予防に貢献する可能性に留まらず、発症過程を膵β細胞の量・質の両面から解析することにより、糖尿病の病態に関する新しい知見の獲得や新規糖尿病治療薬の開発が可能になると期待されます。また、機能・局在の両面を反映した非侵襲的診断法の実現によりインスリノーマや膵島細胞症等の患者さんのお役に立てればと考えておりますので、ご相談いただければと思います (diabetes*kuhp.kyoto-u.ac.jp *を@に変えてください)。