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甲状腺の病態生理に関する研究

甲状腺ホルモンは、発生・分化、生体機能や代謝の調節に欠かせない重要な働きを担っています。私たちは、甲状腺の生理学の理解を深めるのに役立つ知見、診断治療に直結する成果を得るために、日々研究を行っています。

甲状腺ホルモンの作用調節に重要な分子である甲状腺ホルモン脱ヨード酵素について、過剰発現マウスの開発を行い、血中甲状腺ホルモン濃度への影響を明らかにしてきました。甲状腺機能低下症マウスの解析法の構築により、多臓器にわたる甲状腺ホルモン作用の定量評価も可能としました。現在これらのマウスを用いて、臨床応用可能な血中バイオマーカーの探索を進めており(北海道大学との共同研究)、さらには環境化学物質の甲状腺ホルモンかく乱作用の評価も行っています(京都府立大学、国立環境研究所との共同研究)。

さらに甲状腺におけるホルモン分泌調節機構を分子レベルで解明するため、新たに開発した甲状腺機能亢進症マウスのフェノタイプを解析しています。具体的には、甲状腺のトランスクリプトーム解析を主に行っており、現在はレポーターマウスを用いた濾胞上皮細胞の選択的回収及び解析も手掛けています。また興味深いことに、この甲状腺機能亢進症マウスは長期的には甲状腺腫瘍を生じます。甲状腺腫瘍の形成に至るメカニズムの追究も行っています(京都大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科との共同研究)。これらの解析を通じて、甲状腺機能亢進症や甲状腺腫瘍に対する創薬を目指しています。