成長因子の調整と骨伸長作用に関する研究
ヒトのように内骨格を持つ脊椎動物が成長するには、体重を支えている硬い骨が伸びる必要があります。これは成熟した骨組織が伸びるのではなく、骨の両端にある薄い成長板軟骨が増殖し、一部が骨に置き換わって新しい骨が作られることにより骨が長くなります。この成長板軟骨における成長は、軟骨細胞の増殖、分化が様々な因子により複雑に制御されることにより成立しています。当研究室では、これら多くの因子のうち、成長板軟骨が分化するために極めて重要なC型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)というペプチドに着目して研究を行っています。
当研究室ではこれまでにCNPが成長を促進することを初めて発見し、軟骨無形成症モデルマウスでCNPが成長障害を改善することを報告しました。これにより現在ではCNPのアナログ製剤が軟骨無形成症の治療薬として認可されています。そのほか、CNP自体は成長板軟骨の肥大化を促進して成長を促すこと、グルココルチコイドは内因性のCNP産生を阻害し成長障害を起こすこと、さらにはCNPの分解抑制が成長の促進につながることなどを報告してきました。最近では他の成長因子である成長ホルモンとCNPを比較し、それぞれの成長板軟骨における時間的空間的な作用の差異について研究を行っています。
CNPをはじめ成長板軟骨に作用する因子の役割を検証していくことにより、将来的に成長障害治療の選択肢を広げ、また成長障害を伴う個々の疾患に応じた治療戦略の確立につながることが期待されます。